日本HP×新しい働き方LABの共同企画で進められている Creative LAB。
クリエイターになりたい人やステップアップしたい人に向けて、さまざまな企画やイベントが実施されています。
今回は、Creative LABを支えてくれている、株式会社日本HPの石橋博明さんにインタビュー。「人間の感情」に興味があると話す石橋さんは、学生時代のとある出来事によって人生が大きく動かされたのだとか……。
石橋さんが大切にしている人生観やHPで働く人の魅力など、お話を伺いました!
■□■□石橋博明(いしばしひろあき)さんプロフィール■□■□
株式会社日本HP コンシューマー事業本部 事業経営部 部長
学生時代は医科学を専攻し、脳研究に携わる。HPに入社後、サーバー・ストレージ・ネットワークなどのITシステムのプリセールスコンサルタントを経験。その後、ビジネス向け一般PCの製品マーケティングを担当し、個人向けPCのデジタルマーケティングを経て、個人向けPC事業の事業経営を担当。ブランディング・マーケティング・デジタルマーケティグ・オムニチャネル・オムニコマースをミックスして、デジタルトランスフォーメーションの実現に挑戦中。愛称はバッシー。
目次
高校2年生で初めて人間になった。100回振られるも、PDCAを回して成功
本日はよろしくお願いします。
早速ですが、石橋さんは「人間の感情」に興味があるとお聞きしたんですが……
はい。人生のテーマとして「人間の感情」を追求することにとても興味がありますね!
……なんだか今日はすごいインタビューになりそうだ
なぜ興味を抱くようになったんでしょうか?
きっかけは恋愛です。
高校2年生のときに、同じ吹奏楽部の一つ年下の後輩に一目惚れしたんです。
初めて見た瞬間にビビッときて。どうにか彼女に振り向いてもらいたく、いろんなアプローチを仕掛けていくなかで、これまで感じたことのない感情の起伏を経験しました。
その経験から「なんで人は人を好きになるんだろうな」と考えるようなって。
好きなタイプも違えば、好きになるポイントも違う。人によっての違いを意識し、考え始めたことによって、「感情って不思議だな」「もっと知りたい」と思うようになりました。
それまでは感情が大きく動くことはなかったんですか?
なかったんですよ。
自分でも「なぜそこまで感情が揺さぶられたのか」と考えてみたら、過去の私は流されて生きていたなというのが分かったんです。
例えば、中学で剣道部に入部したのも、小学生の頃に剣道をやっていたのが理由。
そのときの自分の気持ちをちゃんと俯瞰せず、「今までやってきたから今回もこれをしよう」と、何がしたいのか意識せずに選んでいたんですよね。
だから、好きな子ができて初めて感情がぐるぐると変わり「今こんな気持ちなんだ」「こうしたいんだ!」という心の変化に驚きました。
自分が今までいかに流されるまま生きて、刺激の少ない人生だったのかを自覚しましたね。ようやく人間として目覚めた気持ちになりました(笑)
恐るべし、恋愛の力……!
好きになったあとは、どんな行動をとったんですか?
PDCAを回しつつ、アプローチし続けました。
……恋愛でもPDCAって回すんですね。
大切ですよ!
ただ、約1年半くらいかけてアプローチをしたんですが、100回以上は振られています。
え、100回も!?
当時は部活も一緒で、ほぼ毎日電話もしてくれていて。
「これは脈アリなんじゃないか」と思って告白をするんですけど、振られてばかりいました。
私だったら諦めそうです。
そう感じてしまいますよね。
でも、私は自分を知ってもらっていない段階で告白をしすぎていたなということに気がつきました。
「自分を好きになってほしい」「知ってほしい」ばかりが先行していて、コミュニケーションが疎かになっていたし、そもそも相手がどんな人が好きなのかも知らなかったんです。
なので、まずは「私はこんな人間です」がより分かるように伝え方を変えてみたり、相手に積極的に質問したりしました。
また、相手がどんな人が好きなのかを聞いて、難しいことですが性格・人間性・趣味などを少しづつ変えていく努力をしました。
現在の年齢になると難しいですが、10代の頃は、人は変われる!と信じてました。若気の至りです。
すごい努力です。ちなみに、結果はどうだったんでしょうか……?
なんと実ったんですよ!
最終的に向こうから告白をしてくれました。
やはり当時は伝えることに必死になりすぎていたんですが、一旦伝えてから相手に考えてもらい、「待つ」姿勢がすごく大切だと感じました。
自分本位で動いても物事はうまくいかないと痛感しましたね。
告白されたとき、あまりに嬉しくて人生で初めて無意識的に涙がこぼれ落ちていました。
「こんなことが人生であるんだな」という嬉しさは今まで味わったことのない感動でした。
駄目な状況から努力し、最終的に自分の欲しいものを手に入れたときの達成感と幸福度は、生きる上で素晴らしいものだと知りましたね。
この経験をきっかけに、人間の感情に興味を抱くように。
感情の不思議を科学的に解き明かしたく、大学で勉強しようと思いました。
センター試験前日に彼女に振られて試験はボロボロ。その反動で猛勉強した大学時代
素晴らしい経験ですね。
大学時代はどんな学生でしたか?
めちゃくちゃ勉強に励んでいましたね。
というのも、実は……センター試験の前日に念願叶った彼女に振られてしまって……。
え!
高校3年生の9月にお付き合いをスタートしたんですが、彼女もだんだんと部活で後輩を指導する立場になり、忙しくなってしまったのが原因です。
振られたのはもう仕方のないことですが、受験シーズン真っ只中の時期だったのでメンタルはボロボロ。
加えて、お付き合い中は今この時間を選ばないと、この先の人生で必ず後悔する!と思い、勉強よりも彼女との時間を優先しました。
結果、学力は上がるはずもなく、第一希望の大学は、受けても無理だなという状況になってきてしまい、諦めました。
でも、後悔はしておらず、この時期はあしたのジョーのように、ただただ真っ白な灰になっていました。
そうだったんですね……。
結局、センター試験の結果で入れる大学へ入学しました。
入学して2〜3ヶ月月経過してようやく心穏やかになり、そこで、いろいろ考えることができました。
恋愛は楽しいけれど、何かを犠牲にするのはもったいないと思い、バランス良くすべてを頑張るべきだと分かり、入学後の大学生活は人生で一番の猛勉強(笑)。
人間の感情にはずっと興味があったので、脳の研究者を目指して大学3年生のときに別大学の大学院へ飛び級し、勉強を続けていました。
ここまでお話を聞いて、石橋さんはこれから脳の研究者を目指して進んでいくと感じていましたが、なぜ企業に就職しようと思ったんでしょうか?
ある意味「限界」を感じたからです。
例えば生物学系の研究の場合、生物のサイクルに合わせて研究をしていると時間がとてもかかります。マウスやうさぎを使った研究がありますが、1つの実験に対して準備から結果まで、3日や1週間待つなどが一般的です。
もし結果から「今回のやり方ではダメだった」と分かったら、また一からやり直して実験しなおします。
仮に人間を研究するとなると、倫理的観点からクローンが作れないように、人間を調べるにも現実的には倫理的な生物学研究の限界があります。
そう考えたときに、「私が生きているうちに人間の不思議をサイエンスで解き明かすのは無理かもしれない」と限界を感じたんですね。
だったら、企業に就職をして多くの人とコミュニケーションをとろう、心理学アプローチに切り替えようと。
さまざまな人と接して刺激を受けながら、文系アプローチとして人間の感情を知りたいと思い就職を決意しました。
「人生は自己満足」好きなことをビジネスに活かす働き方
HPとはどのようなご縁で就職したんでしょうか?
実は……就職活動では、もともと某A社へ入社するのが目標だったんです(笑)。
ちょうど2005年に放送されたテレビドラマ『恋におちたら〜僕の成功の秘密〜』が、IT企業を舞台に繰り広げられているサクセスストーリーで、これを観て「私も某A社に行きたい!」と思って。
なので、最初は某A社に行く就活準備しかしていなかったんです。
ただ、さすがに1本じゃ心細かったので、HPも受験しました。
そうだったんですね。
では、HPを受けてみようと思った理由は……?
怒られるかもしれませんが、社名がかっこよかったからです。なので事業内容も最初はあまり知らなかったですねえ。医科学の学生からするとHPは遠い企業でしたので。
……怒られそうですね。
でも結局どちらも合格したんですよ!
そのまま本命だった某A社に入社しようとしたんですけど、ここで過去の恋愛経験が影響してしまって……
どういうことでしょう?
彼女にアタックをしてうまくいったけれど、結局フラれたという経験の落差が大きくて、好きなものは憧れでとっておきたいという心境になったんです。
もう過去のようなギャップを感じたくなく、「好きだからこそ現実を知りたくない」と思いました。
なので、「行きたいんですけど、御社には行けないんです」と人事に伝えて、某A社は辞退しHPに入社しました。あははは。
「好きのままでいたい」という心境はなんとなく分かりますが、就職活動でそういう心境になったお話は初めて聞きました(笑)。
入社後はどんなお仕事をしていたんですか?
入社後は、プリセールスコンサルタントを行なっていました。
主にBtoB(法人)向けにサーバーやストレージなど、ハイエンドのパソコンを販売したりコンサルティングをしていました。
だた、正直BtoBが自分には合わないなと感じていたんですね。
BtoBの場合、結局キーマンとなる人の予算や感情によって導入するシステムやパソコンが決まってしまいます。
その流れに面白さをあまり感じられず、最初の3年半ほどは腐っていました。
仕事後、バーで遅くまで飲み、翌日二日酔いで仕事をする……なんてことも多かったです。
転機となるきっかけはあったんでしょうか?
入社してから3年半ほど経った頃です。
ちょうど東日本大震災の後で会社をやめようかと迷っていたときに、BtoC向けの事業の社内公募があったんです。
販売先をBtoC向けに変わることで、何か変化があるのではないかと思い、応募して異動しました。
異動していかがでしたか?
ブランディングからマーケティングまで全てを行うのは、職種的には以前と同じようなことをしています。
ですが、価格を変えたり表記する言葉を変えるだけで、お客様の行動が変わるのがよく見えて、マーケティングの楽しさを一層感じられるようになりました。
最近、とあるマーケティングサービスを使い始めて、より楽しさを実感していますね。
例えば、街を歩いていて新商品のアンケートのご協力で声をかけられることがあると思います。
アンケートの最後に「この商品が販売されたら購入しますか?」と聞かれたら、大抵の人は「購入」にチェックと入れると思います。
私は「実際に販売されたら本当に購入する人はどのくらいいるのか」ということがずっと気になっていました。
「思う感情」と「実際に行動に出る感情」の違いの差はどんな所にあるんだろうかというのが、今のマーケティング技術で調べられるんですよ。
面白そうですね!
現在連携しているサービスのデータxアンケートデータと掛け合わせていくと、個人の購入記録によって趣味や趣向性が見えてきます。
感情と行動の差が見えると、その人自身も見えてくるのでとても面白いですね。
違いや心理を知ることで、人間の面白さを改めて感じます。
私はそういう違いや変化を知って、思いを巡らせるのが好き。
自己満足で十分で、そんな瞬間がたまらなく幸せなんですよ。
石橋さんは、ご自身の好きなことを仕事でもうまく活かしていらっしゃるなと感じます。
ありがとうございます。
もちろん、自分の趣味を仕事に活かすためには大義名分がないとダメですが(笑)
現実との折り合いをつけつつも、しっかりと結果さえ出しておけば、ある程度のことはできるはず。
私は、人生は「自己満足」でいいんじゃないかと思っています。
現実とのバランスが取れる環境さえ整えば、自己満足の追求ってできるんですよ。
「人生は自己満足」ですか。
はい。自分の幸福度は自分でしか分かりません。
もし、自分にとって幸せなことが周りの人との幸せと一致しているのであれば、ビジネスにも活かしやすいですし、いいこと尽くしですよね。
反対に、自分の幸せが周りの人に影響を与えられなくても、自分の世界観だけで終わりますし、自分が幸せになれるのだから問題ありません。
人生で「あ〜幸せだなあ」「自分が幸せになれたから全然いいや!」という自己満足が増えると、毎日がとても楽しくなりますし、いろんなことにチャレンジしたくなりますよ。
ぜひ皆さんも「自己満足」を意識してみてほしいなと思います。
社員一人一人のこだわりが詰まった、HPの製品
#私をつくるクリエイティブでは、クリエイターになりたい人やステップアップしたい人に向けて、HP製品や社員の皆さまにサポートをいただいています。
改めて、御社で働く人や製品の魅力について教えてください。
弊社には、創立時から培ってきた独自の企業理念「HP Way」があります。
創業者の一人であるビル・ヒューレットの「人間は男女を問わず、良い仕事、創造的な仕事をやりたいと願っていて、それにふさわしい環境に置かれれば、誰でもそうするものだという信念に基いた方針であり、行動規範だと言えます。」という言葉によって、会社の目的が明文化されていきました。
こうした考え方が従業員一人一人にしっかりと根付いているというのが魅力と言えます。
誰がどういう気持ちでモノ作りをしているかは、商品を作る上で大切な視点。
日々幸せなのか、そうじゃないのかなど、環境によってアウトプットの質は変化します。
その点、HPは幸せに生きようとしている人、1人1人が生きているモチベーションをちゃんと持ち、それを叶えるために会社に集まって仕事をしているイメージ。
そんな人たちで作った製品は、ただ作業をこなすだけではなく、自分たちのこだわりや思いがぎゅっと詰まっているんですよね。
例えば、どんなこだわりがありますか?
ノートパソコンのディスプレイとキーボードの幅ですね。
某企業様の場合ですと、キーボードの幅が少し短いと思うんです。
ですが、HPの場合ですとディスプレイとキーボードの幅が揃っているんですよ。
そうなんですね!
どれも細かいことなんですが、「その方が美しいでしょ?」と感じる人が作っているんですよね。
他にも本革や木と一体化させたパソコンを作ったり(笑)。
そんなふうに、従業員それぞれがプライベートでもやってみたいこと、チャレンジしたいことをビジネスとうまくかけ合わせながら、商品を作り出しています。
自分たちも消費者として「こうなったらいいな」を体現していると感じますね。
ありがとうございます。
最後に、石橋さんが今後やっていきたいことはありますか?
弊社は、製品の良さや強みはたくさんあるんですが、製品の良さを“どう伝えていくか”という部分が弱いんですね。
よく言えば真面目すぎる。
いい製品を作ったときは、大勢に響いたり届けられたりするような伝え方や宣伝の仕方が必要になってきます。
今後はより一層、会社のブランディングに関わるような伝え方や、製品の強みだけではなくストーリー性、変化球を持った伝え方ができるようになりたいですね。
CreativeLABでは、クリエイターのみなさまのクリエイティブ活動をバックアップできるよう、Facebookグループを活用し、より良いコミュニティづくりを目指しています。
本記事をお読みになられクリエイティブな活動にご興味を持たれた方、クリエイティブに挑戦してみたい方、現在クリエイターとしてご活動されている方は、ぜひCreativeLABへご参加ください。
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石橋さんを交え、ミーハーとクリエイターについて語ったYouTube動画「CreativeLAB On Air vol.2」はこちらからご覧いただけます。
ライタープロフィール
<取材・文> 田中さやか
新しい働き方LAB和歌山コミュニティマネージャー。
テレビ番組制作会社の勤務を経てフリーライターに。取材やインタビューを中心に活動中。
noteを毎日更新しています。
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