2022年から新たに始まったイベント企画「Try Creative!」。
「新たにクリエイティブにチャレンジしよう」と考えている人たちの背中をそっと押す、そんなものを目指しています。
今回は、2022年1月17日に開催された、第1回「Try Creative!」supported by 日本HP の様子を、ハイライトでお届けします!
記念すべき初開催のテーマは、「イラスト」。
イラストレーターとして活躍中のサタケシュンスケさんをスペシャルゲストにお招きし、
- イラストを描くようになったきっかけ
- イラストレーターに必要な力
- 営業やお金の話
など、気になるお話をたっぷりと伺いました。
サタケさんのイラスト実演という、夢のような時間も…!
イラストレーターだけでなく、すべてのクリエイター必見の内容です!
【スペシャルゲスト】
イラストレーター サタケシュンスケ氏
株式会社ひととえ代表。1981年 大阪府生まれ。グラフィックデザイナー職を経て、2007年にイラストレーターとして独立。2021年に法人化。主な仕事は広告、書籍等で使用するイラストレーションおよびキャラクターの制作。得意とするジャンルは教育や育児。モチーフは人物や動物が中心。2014年、2017年にグッドデザイン賞。AdobeMAX登壇。2020年に作品集「PRESENT」(玄光社)、2021年にiPadアプリ Adobe Fresco イラストテクニック(玄光社)を出版。代表作に NHK おかあさんといっしょ「ガンバラッパ★ガンバル〜ン」など。
【対談者】
CreativeLAB/旅するエンジニア ヤマウチケンイチ(ケンケン)氏
旅するエンジニア。1987年広島生まれ。地図会社IT部門のプロジェクトマネージャーを経て、2015年にエンジニアとして独立。2021年に法人化。ECサイト、予約管理システムなどWeb開発を行う。去年からイラストに力を入れ、166日つづけて毎日猫ガキを実施。クリエイターとして一歩を踏み出す。
CreativeLAB/司会もできるWebデザイナー ヒロサワカナコ氏
司会もできるWebデザイナー。茨城を拠点にしてフリーランスとして活動。10年以上エステティシャンをしていたが出産を機に、「新しい働き方」を模索し始め、Webデザイナーに転職。2020年には、CreativeLABのイベント司会をスタートし、イベントの企画、サポートも行っている。
目次
イラストを描くようになったきっかけは「友達と仲良くなるため」
サタケさんは、物心ついた頃から絵を描いていたそうですね。その頃からイラストを仕事として本気でやっていく意気込みだったんですか?
当時はイラストレーターという仕事を知らなかったので、意識していませんでしたね。友達と仲良くなるためのきっかけとして、教室で絵を描いていました。
絵の道を意識し始めたのは、高校生の頃。
音楽をしている友人に「CDジャケットの絵を描いて」と頼まれて、
そこで初めて「僕の絵を必要としてくれている人がいるんだ」と気付きました。
元々コミュニケーションツールとして絵があって、それが今の仕事に繋がっているんですね。
イラストレーターに必要な「画力」と「自分らしさ」
イラストレーターに必要な力として、
- 画力
- 自分らしさ
について、お話を伺いました。
画力向上のコツは「上手い人の真似をする」
画力を上げるために、具体的に何から取り組めばいいですか?
画力は筋トレと一緒で、ある程度続ければ誰でも上達します。好きなイラストレーターの絵を模写するだけでもグイグイ上手くなっていくと思いますよ。
色んなスタイルの方の絵を真似して描くことで、その人の上手さのポイントが見えてくる。だから、一番早く上達したければ、上手い人の真似をするのが良いと思います。
ものまね芸人の方もそうですが、わかりやすく誇張してくれているものを真似するのって、簡単じゃないですか。
イラストレーターも同じで、すでにイラストレーターの方がわかりやすく、伝わりやすい絵を描いている。それを真似することで、「この部分を誇張させてるから良いんだ」というところが伝わるんです。
だから、最初から「リンゴを見て描く」でも良いんですけど、イラストレーターが描いたリンゴをたくさん見た方が、その人らしさがどこに表れているか見つけやすいかもしれませんね。
ものまね芸人の真似をするように、イラストレーターの絵を真似る。とても面白く、頷きながら聞き入ってしまいました!
自分らしさは自然と滲み出る
自分らしさを出していくために、サタケさんが参考にしてきたことや、工夫されてきたことはありますか?
「何を描いてる人か」っていうのもひとつ「らしさ」に繋がると思いますし、色使いとか、デフォルメの仕方とか、本当に色々なところで自分らしさって感じてもらえるポイントがあると思うんです。
でもそれって、考えて、狙ってできることでもなかったりする。
とは言いつつ、僕も駆け出しの頃は、自分らしさを手に入れたくて、背伸びをして目立つような表現を勉強してみたり、色々と右往左往しました。
そういう時期を経て、自分が好きだと思うもの。
真似をして、どんどん自分の中に取り入れて、その上で描き続けていると自然と滲み出てくるものが、自分らしさだと思います。
「どんな絵を描いてもこの色使ってるな」とか、「無意識にこういう形を描いてるな」とか、他の人が見たら「この人が描いた絵だな」ってわかるじゃないですか。
真似をして描いても、自分らしさは多分バレる。
狙わずとも勝手に出てきているので、それに自分が気付けるかどうかだと思います。
自分の作風を見失っていると感じる時は、
変に意識せず、そのまま真っすぐ進んでいけば良い
とアドバイスもくださいました!
サタケシュンスケ氏のイラスト実演
僕は普段、AdobeのIllustratorを使って絵を描くことが多いので、ゼロからどう作り進めていくかを見ていただこうと思います。
サタケさんがIllustratorで絵を描く理由は、主に3つ。
- パーツごとにバランスを自由自在に変えられる
- アプリ間を行ったり来たりする手間が省ける
- データが軽い
データを大きく引き伸ばせるのも、メリットですね!
動物の中でも、特に犬が好きだというサタケさん。今回は、犬の絵を描いてくださいました!
ラフを描く
ペンタブを使って線を引いていきます。
ラフが描けたら、描画モードを乗算に変えて、薄くしていきます。
下地を作る
ラフの下にもう一つレイヤーを作って、色を敷いていきます。
次に、白で犬の形を切り抜いていきます。
ちなみに、今はマウスを使っています!
最近、切り絵っぽいスタイルで描くことが多いというサタケさん。
マウスで不器用にザクザク描いていくと、より切り絵っぽくなるそうです。
下地の上にカラーを入れる
下地の上に、カラーを入れていきます。ここでも、描画モード乗算を使っていきます。
描画モードを乗算にすることで、色と色が重なる表現ができ、版ズレのような、アナログチックな雰囲気になるそうです。
テクスチャを重ねてレトロ加工する
最後に、テクスチャのデータを絵に重ねて、レトロ加工をしていきます。
なるほど!ここで乗算が効いてくるんですね!
こういうアナログチックなテクスチャは、作る度に新しいものができます。
こういうところで、簡単には真似できない、自分の特徴を出していくこともあります。
最後に、もう一加工。
大小様々な丸をランダムに作って、まとめてブラシのウィンドウの中に放り込みます。
新しくできたブラシで、スプレーを吹いたような表現を散らしていきます。
データとしては線なんですが、線幅を変えることで、スプレーの大きさも変えられます。
Illustratorで描くと、平面的なイラストになりがち。
Frescoで作ったテクスチャを加えるなど、Illustratorで描いたように見えない方法を、日々研究されているそうです。
仕事獲得のための営業やお金の話
普段なかなか相談しづらい、営業やお金の話。
- 初心者が仕事を獲得するためのコツ
- プラットフォームの使い分け方
- お金に対する考え方
など、仕事獲得のための営業やお金にまつわるお話を伺いました!
市場とお金の流れを把握するのが最初の一歩
スキルのある人はたくさんいるのに、仕事を獲得できていないという声を聞きます。
「絵が上手い人=仕事がたくさん集まる人」ではないなら、絵の上手さ以外に必要なことは何でしょうか?
自分のできることと、相手の求めていることがマッチングしないと仕事にはなりません。いくら絵がうまくても、需要がなければそれは仕事にはならないんです。
だからまずは、イラストレーターの仕事にはどんなジャンルのものがあって、どういうものが人気か、市場をしっかりと把握することが大事だと思います。
あとは、誰がお金を出しているのかは、わかっておく必要がありますね。
どこからお金が出てきているのかがわかっていないと、アプローチのしようがありません。
「こういう風に自分の仕事は流れてくるんだ」とわかると、自分がどこに絵を持っていけば良いのかがわかってくると思います。
まずは、情報収集が大切なんですね。
新規顧客の9割はウェブサイトを見て仕事を依頼する
初めてのお客様は、9割以上がウェブサイトからお話が来ているそうですね。
そうですね。僕は元々地方で、「会って仕事を獲得」っていうのが難しかったので、最初からウェブサイトに力を入れていました。
「じゃあ、そのウェブサイトはどうやって見てもらうの?」っていうのは、今ならSNSが一つの入口になっています。
TwitterやInstagramでたくさん絵を発信することで、興味を持ってくれた方がウェブサイトに流れて、そこで「この人に頼んでみたいな」と思ってもらう、というのが一番多いですね。
なので、いかにしてウェブサイトに人を呼ぶか、に力を注いでいます。
noteとYouTube、Twitter、Instagramをお一人で運営されているサタケさん。
すべてウェブサイトで仕事を獲得するための導線だそうです。
目的やターゲットに合わせてプラットフォームを使い分ける
プラットフォームの使い分け方はありますか?
使い分けは、かなりしていますね。
ウェブサイトには自分のできることをたくさん載せていますが、SNSだと、自分の絵だけに集中して見てもらえる時間はほとんどない。
だから、インパクトのあるものや話題性のあるものが中心になってきます。
Twitterは、トレンドのテーマに絡めた絵で新しい人に見てもらえるチャンスを増やしたいと思っていますし、Instagramはポートフォリオの代わりになるため、自分の得意なものだけを厳選して載せるようにしてます。
YouTubeは、作品を作る工程や作り方など、より深く興味を持ってくれた方に向けて作っています。
TwitterでBlenderを使った作品を上げられていたと思うんですが、失敗作も出されていました。ああいうのを見ると、人間味があって面白いなと感じます。
Twitterでは、失敗作の方が反響があったりするんです。
「捨てるとこないな」って思っておけば、発表する作品を生み出す時間をわざわざ設けなくても、今やっていることが全部コンテンツになるので、ネタに困ることはなくなりました。
どこまで出すかは自分のブランディングにも関わってくると思いますが、
僕は出すことで良い反応をいただいています。
目的やターゲットに合わせて、プラットフォームを使い分けることが大切なんですね!
「安いから」という理由で断らない
「この予算では難しいな」という時、どういう風に折衝されていますか?
値段を理由に断ることは、ほとんどありません。
お客様が出せる予算にも限りがあるので、それに合わせた最善をどうやって提案するかという調整で、できるだけ仕事にするようにしています。
レストランに行ったら、松・竹・梅でコースが分かれているように、自分の中でおすすめコースを作るんです。
と言っても、クオリティを落とすわけではなくて、工程数を減らしたり、提案数を減らしたりして、出来上がりのクオリティは遜色なくても、こちらのかける力のバランスを工夫するだけで、お客様の予算内で精一杯やれると思っています。
よほど作業に合っていない場合以外、基本的に言い値で仕事を受けるとは、驚きです!
見積書の金額は「仕事への本気度」
見積り金額に自信や責任感が表れると思うのですが、初心者が自信を持つためには、どうしたらいいですか?
お客様からすると、駆け出しでもキャリアが長くても、あなたに頼みたいと思っている時点で同じ土俵です。
だから、キャリアで値段を決めることは全くしなくていい。
仕事の相談が来ている時点で、一定の評価をくれているということなので、
お客様が思っているよりもずっと安い予算で見積りを出してしまうと、逃げの理由を作っていることになります。
お客様は「10万出せるよ」って言っているのに、「いや、1万円でいいです」って仕事を受けてしまうと、お客様も10万円分の注文を言えなくなってしまうんです。
結果、出来上がるものは1万円のもので、10万円のクオリティにはならない。
だから、相手に気持ちよく仕事してもらうためにも、いただけるものはしっかりいただく。その分しっかり恩返しするという気持ちでいないといけません。
相手にも失礼だと思うことで、変に弱気にはならなくていいと思います。
むしろ「これぐらいはしっかりやらせてください」というのが見積書の金額の表れ。
お金が欲しいというより、「しっかりやります」という意思表示だと思えば、そんなに怖がる必要はないですよ。
見積書の金額で、仕事への本気度を示せばいいんですね!とても勇気が湧きました!
これから新しい道を目指す方へ
稼ぐことはもちろん大事ですが、楽しまないと続けられません。
オンラインでも繋がれる世の中なので、クリエイター仲間との繋がりを作って、色んな刺激を受けていくと良いと思います。
CreativeLABもそういう場所だと思うので、ぜひ活かしてください。
これを機に、僕とも繋がっていただけたら嬉しいなと思っています。
サタケさんのHPやTwitterをぜひチェックして、サタケさんと繋がってみてください!
CreativeLABに参加して、アーカイブ動画をチェックしよう!
いかがでしたか?
この記事でお伝えしきれなかったお話や、サタケさんが実際に絵を描く様子が見られるイベントのアーカイブ動画は、CreativeLABのFacebookグループにて公開中。
気になる方は、ぜひCreativeLABに参加して、アーカイブ動画をチェックしてみてください!
《ライター:石川紫野》